ここでは、令和4度に東京都で実施された製菓衛生師試験について、科目別に私なりの見解で解説をしていきます。
今回は、食品衛生学をみていきます。
よろしければ、まだ実施されていない令和4年度の製菓衛生師試験勉強や令和5年度の国家試験のお役に立てればと思います。
また令和4年度に実施された製菓衛生師試験について、以下より確認ができます。
●令和4年度東京都製菓衛生師試験の実施について 東京都福祉保健局
●令和4年度東京都製菓衛生師試験合格者受験番号一覧(PDF:105KB)
【食品衛生学】
問21:全国の月別の食中毒発生件数に関する記述で、( )に入る語句の組み合わせとして、正しいものを次の中から選びなさい。
令和2年では、1月から3月については( A )の食中毒が多く、湿度や気温が高い6月から9月については( B )の食中毒が多い。また、寄生虫の食中毒は年間を通して発生している。春や秋には有毒な植物やキノコの誤食での食中毒が見られる。
( A ) ( B )
1 ウイルス性 ― カビ毒
2 ウイルス性 ― 細菌性
3 細菌性 ― ウイルス性
4 カビ毒 ― ウイルス性
正解:2
解説:令和3年の食中毒発生状況について、事件数は717件報告されています。それぞれの病因物質の割合は、細菌で230件、ウイルスで72件、寄生虫で348件、化学物質で9件、自然毒で45件、その他1件が報告されています。細菌では「カンピロバクター」が154件、ウイルスでは「ノロウイルス」のみの報告、寄生虫では「アニサキス」が344件、自然毒では「植物性自然毒」が27件を占めています。
【令和2年(2020)食中毒発生状況(Excel:168KB)】
【令和2年(2020)食中毒発生事例(Excel:60.7KB)】
【令和3年(2021)食中毒発生状況(Excel:62.3KB)】
【令和3年(2021)食中毒発生事例(Excel:51.9KB)】
問22:食中毒の防止に関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 サルモネラ食中毒の防止には、卵は割卵したまま常温で長時間保存せず、速やかに加熱殺菌する。
2 黄色ブドウ球菌の食中毒の防止には、食品は素手で扱わず、手袋の着用等をして扱う。
3 ウエルシュ菌の食中毒の防止には、一度十分に食品を加熱するが、食べる直前の再加熱は行わない。
4 ノロウイルスの食中毒の防止には、感染した調理従事者が食品を汚染しないよう、従事前に健康確認を行う。
正解:3
解説:ウエルシュ菌感染症について、ウエルシュ菌はヒトや動物の大腸内に常駐している菌です。食中毒になるケースは、エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌が大量に増殖した食品を喫食し、大腸の中で毒素(エンテロトキシン)を放出することで発症します。潜伏期間は、通常6~18時間(平均10時間)です。主な症状は、腹痛、下痢で稀に嘔吐や発熱などの症状が出て、1~2日程度で症状は回復します。ウエルシュ菌は、100℃で1~6時間の加熱にも耐えられる耐熱性の芽胞を作ります。事件数は、年間20~40件程度で、多くの原因は食肉、魚介類等の調理品になります。加熱調理された後、数時間放置された状態のものを喫食することで感染する事例が多い。予防としては、すぐに喫食する。速やかに10℃以下に冷却する、55℃以上で保管する、よく混ぜながら調理する、調理後の食材は小分けに保存が挙げられます。
問23:食品中の有毒物質に関する記述で、( )に入る語句として、正しいものを次の中から選びなさい。
「生あん」の原料とする豆の中には( )を含んでいる豆類があり、これを原料として「生あん」を製造する場合は、( )を除去するため、食品衛生法に基づいた、「食品、添加物等の規格基準」の「生あんの製造基準」で定められている方法により、つけ込みや水さらし等を行わなければならない。
1 青酸(シアン)化合物
2 アフラトキシン
3 テトロドトキシン
4 グリコアルカロイド
正解:1
解説:豆類には、シアン化合物が含まれているものがあります。シアン化合物は食中毒の原因物質となるため、豆類の場合、調理・加工時に繰り返えし水に晒して完全に除去して使用します。これに関する事項は、食品衛生法で規制されています。
問24:食品のテイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(宅配)を行う際、食中毒を起こさないために必要な衛生管理に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 客席で提供しているメニューであるため、中心部まで十分加熱しない食品でもよい。
2 デリバリー(宅配)では、冷たい食品は10℃以下、温かい食品は65℃以上に保つ。
3 客席での提供ではないため、調理能力を超えた大量の調理を行ってよい。
4 テイクアウト(持ち帰り)では、購入後は長く持ち歩かず、速やかに食べるよう、口頭や容器のシールなどで客に伝達しなくてよい。
正解:2
解説:厚生労働省が提唱している予防チェックは、①デリバリー・テイクアウトに適したメニュー、容器になっているか。②調理能力に見合った提供数にしているか。③加熱が必要な食品は中心部まで十分に加熱しているか。④保冷剤、クーラーボックス、冷蔵庫、温蔵庫などを活用できているか。⑤速やかに喫食するよう知らせているか。などが挙げられています。
【飲食店における持ち帰り・宅配食品の衛生管理等について:PDF153KB】
【飲食店における持ち帰り・宅配食品の衛生管理等について(その2):PDF902KB】
問25:平成30年に改正された食品衛生法の、改正内容に関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 「特別の注意を必要とする成分等を含む食品」との関連が疑われる健康被害が発生した場合は、事業者から行政へ、その情報を届け出ることが義務化された。
2 食品衛生法第1条に示されている「法の目的」が改正された。
3 営業許可業種が見直され、新たに届出制度が創設された。
4 食品用器具と容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度が導入された。
正解:2
解説:平成30年に改正された概要は、①大規模または広域におよぶ「食中毒」への対策を強化②「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化③特定の食品による「健康被害情報の届け出」を義務化④「食品用器具・容器包装」にポジティブリスト制度を導入⑤「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設⑥食品等の「自主回収(リコール)情報」は行政への報告を義務化⑦「輸出入」食品の安全証明の充実です。前回の改正から15年が経過している中で、食を取り巻く環境の変化、国際化等に対応し、食品の安全を確保するために改正が行われました。
問26:蜂蜜に関する記述で、( )に入る語句の組み合わせとして、正しいものを次の中から選びなさい。
腸内環境が整っていない( A )の子供は、蜂蜜を食べることによって、全身の脱力状態や筋肉弛緩による麻痺症状が特徴の( B )にかかることがあるため、加熱をしたものであっても与えてはいけない。
( A ) ( B )
1 1歳未満 ― 乳児ボツリヌス症
2 小学生以下 ― サルモネラ症
3 1歳未満 ― サルモネラ症
4 小学生以下 ― 乳児ボツリヌス症
正解:1
解説:蜂蜜と子供の関係について、1歳未満の子供には与えてはいけない旨を厚生労働省が喚起しています。原因は、乳児ボツリヌス症を発生するリスクが非常に高いためです。
問27:食品添加物に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 食品衛生法で定められた添加物の使用基準や成分の規格は、必ずしも守らなくてもよい。
2 安全性と有効性が確認されていないが、厚生労働省が指定しているものを指定添加物という。
3 長年使用されてきた全ての天然由来の添加物を既存添加物という。
4 一般に食品として飲食されるもので、添加物としても使用されるものを一般飲食物添加物という。
正解:4
解説:食品添加物の種類は、指定添加物(466品目)、既存添加物(357品目)、天然香料(約600品目)、一般飲食添加物(約100品目)があります。これらはすべて、厚生労働省が使用について規格や基準を食品衛生法第12条に基づいて定めています。
問28:食品添加物の使用目的に応じた分類と物質名に関する組み合わせとして、正しいものを次の中から選びなさい。
( 分類 ) ( 物質名 )
1 甘味料 ― 次亜塩素酸
2 保存料 ― ソルビン酸
4 殺菌剤 ― エリソルビン酸
正解:2
解説:次亜塩素酸は、塩素系漂白剤です。サッカリンは、人工甘味料です。エリソルビン酸は、酸化防止剤です。
問29:食品表示法に関する記述で、( )に入る語句の組み合わせとして、正しいものを次の中から選びなさい。
食品衛生法、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)及び健康増進法の3つの法律の( A )に係る規定を一元化した法律で、平成27年4月1日に施行され、事業者にも( B )にも分かりやすい表示を目指した具体的な表示ルールである「食品表示基準」が示された。
( A ) ( B )
1 食品表示 ― 保健所職員
2 全ての表示 ― 保健所職員
3 全ての表示 ― 消費者
4 食品表示 ― 消費者
正解:4
解説:食品表示法は、食品を摂取する際の安全性および一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するため、食品衛生法、JAS法、健康増進法の食品表示に関する規定を統合して、消費者法の基本理念を踏まえて、食品の表示義務付けを目的とした法律となります。
問30:油脂を含む食品に関する記述で、( )に入る語句の組み合わせとして、正しいものを次の中から選びなさい。
油脂を含む食品は、保存状態が悪い場合や、加熱した場合などに、不快臭を生じることがある。これは、食品中の( A )が環境中の酸素によって酸化を受け、風味が悪くなることによって引き起こされ、これを( B )と呼ぶ。
( A ) ( B )
1 たんぱく質 ― 酸敗
2 たんぱく質 ― 腐敗
3 不飽和脂肪酸 ― 酸敗
4 不飽和脂肪酸 ― 腐敗
正解:3
解説:油脂性食品は、長期保存した場合、酸素、湿気、熱、光、金属、微生物、酵素などの作用により、不快臭や、味の劣化といった現象が起こります。こういった油の劣化現象のことを「酸敗」もしくは「変敗」と呼んでいます。
問31:食品中の異物に関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 金属片やガラス片の異物の防止には、製造機器に破損等がないか、日常的な確認や管理が重要である。
2 人の毛髪の混入を防止するには、作業着への付着を作業前に除去する対策や帽子の着用を確実に行わなければならない。
3 食品中の異物には、作業工程中に混入した、人の毛髪、昆虫、ガラスや金属の破損片等がある。
4 原料とした野菜の植物片や原料肉の骨のかけら等は、原料由来であれば異物にはなりえない。
正解:4
解説:食品中の異物について、汚物混入によって起こった健康障害は食中毒の一つと考えられるため、HACCP等の衛生管理のもと製造者は異物混入を防がなければなりません。食品によって、消費者によって異物混入の概念に差異が生じる案件は多数報告されています。私の考えは、入っていては明らかにおかしいと思えるものはすべて異物と考えられるのではないかと思います。
問32:衛生管理に関する記述で、( )に入る語句として、正しいものを次の中から選びなさい。
平成30年の食品衛生法の改正により、食品事業者が自ら行うべき「( )に沿った衛生管理の実施」が制度化された。これにより、原則すべての食品事業者が、( )に基づく衛生管理、または、( )の考え方を取り入れた衛生管理のどちらかを実施することになった。
1 HACCP
2 規格基準
3 衛生規範
4 一般衛生管理
正解:1
解説:HACCPは、令和3年6月1日より、原則としてすべての食品等事業者に衛生管理として義務化されました。HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品等事業者自ら食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全行程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法となります。このHACCPは、もともとアメリカのNASAが宇宙食を製造する際に生まれた衛生管理手法です。
以上が、令和4度に東京都で実施された製菓衛生師試験の食品衛生学に関する解説となります。実際の試験問題は、東京都のHPで公開されています。(以下にリンク有)
食品衛生学は、食品に関する法律が多くあり、食中毒などの感染症や食品の表示に関する事項、そしてHACCPなどの衛生管理に関する事項を把握しておかなければいけません。一番元となる学問であるため出題数も多いですが、食品衛生学を理解できれば、他の科目も理解しやすくなると思うのでしっかりと内容を把握しておくとよいでしょう。
製菓衛生師試験の対策は、過去問題を繰り返し解いていき、出題頻度の高い部分を把握しておくと、ある程度対処できると思います。令和5年度の東京都で実施される製菓衛生師試験を受験される方たちに少しでも助けになればと思います。
以下のリンクは、試験対策に活用できるかと思います。
【東京都HPより】
●令和4年度 東京都製菓衛生師試験・問題(PDF:4,892KB)
●令和4年度 東京都製菓衛生師試験・正答(PDF:50KB)
●令和4年度 東京都製菓衛生師試験・訂正(PDF:123KB)
【Amazonプライムへの登録はコチラ】
製菓衛生師試験の試験勉強に役立てましょう!
Amazonプライムは、動画見放題だけではない!
送料無料で、勉強に必要な書籍を手に入れましょう!!
「Kindle Unlimited」への登録はコチラからできます。