ここでは、令和3年度に実施された東京都の製菓衛生師試験について、科目別に私なりの見解で解説をしていきます。
ここでは、「製菓理論」を解説していきます。
よろしければ、製菓衛生師試験勉強のお役に立てれば幸いです。
【東京都の製菓衛生師試験状況はコチラから確認できます。】
www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp
【製菓理論】
問40:甘味料に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 砂糖(蔗糖)は、ブドウ糖が2分子結合した二糖類である。
2 転化糖は、吸湿性が高いためしっとりしている。
3 和三盆は、主に沖縄県や鹿児島県の特産である。
4 蜂蜜は、低温に置くと蔗糖が結晶となって沈殿する。
正解:2
解説:砂糖(ショ糖)は、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類です。
和三盆糖は、原料はサトウキビなり、香川県と徳島県で生産される砂糖です。
蜂蜜の結晶化について、低温になると白く固まる性質があります。これは、主にブドウ糖(グルコース)によるもので、果糖(フルクトース)は結晶化しにくい性質を持っています。
問41:米粉と米の加工品に関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 おかきは、粳米の加工品である。
2 米粉には、生でん粉と糊化でん粉の両方の製品がある。
3 米粉は、地方により呼び方や名称が異なる場合がある。
4 米のでん粉の成分であるアミロースとアミロペクチンの割合は、品種により異なる。
正解:1
解説:「おかき」は、糯米を原料とします。その他に「せんべい」は粳米を原料とし、「あられ」は糯米を原料としています。
問42:小麦粉に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 等級が高いほど、食物繊維が豊富である。
3 小麦粉の構成成分で最も多いのは、でん粉である。
4 強力粉よりも薄力粉の方が、たんぱく質含量が多い。
正解:3
解説:小麦粉の品位別分類(等級)の基準は、小麦粉内の灰分含量で決められています。
小麦のたんぱく質には、グリアジンとグルテニンがあり、水と力の影響により「グルテン」が形成されます。このグルテンは、たんぱく質の「質と量」が多いほど、「強いグルテン」が形成されます。
小麦粉のたんぱく質含量が多いほど「強力粉」で、少ないほど「薄力粉」に分類されています。
問43:卵白の起泡性に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 卵白は新鮮なほど起泡性がよい。
2 砂糖を加えると起泡性がよくなる。
3 レモン汁を加えると起泡性がよくなる。
4 乾燥卵白の水和液は起泡性がない。
正解:3
解説:卵白は、新鮮なものほど「濃厚卵白」が多く、その影響で起泡性は劣ります。
卵白の起泡性と砂糖の関係について、砂糖は気泡を妨げますが、できた気泡は強固にしてくれます。
乾燥卵白の水和液は、「起泡性を示します」が、乾燥全卵は「起泡性を示しません」。
問44:キャッサバの根茎から精製したでん粉製品として、正しいものを次の中から選びなさい。
1 タピオカ粉
2 片栗粉
3 わらび粉
4 くず粉
正解:1
解説:キャッサバが原料となるものは、「タピオカ粉」です。
片栗粉は、カタクリの地下茎から取れますが、高価になるため、市販の安価なものはジャガイモのでん粉で代用しているものが多いです。
わらび粉は、ワラビの根から取れます。これも高価なためサツマイモなどのでん粉を代用しているものがあります。
くず粉は、葛の根から取れます。主に「葛餅」の原料になります。
問45:乳及び乳製品に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 牛乳とは、乳牛からしぼったままの牛の乳のことである。
2 クリームとは、牛乳を濃縮処理したものである。
3 発酵バターとは、クリームを乳酸発酵させて作ったバターである。
4 バターミルクとは、バターまたはクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去したものである。
正解:3
解説:乳牛から搾ったものは「生乳」です。牛乳は、生乳をヒトが飲用できるように調整・殺菌したものです。
クリームは、牛乳に含まれている乳脂肪分を調整してつくります。濃縮処理したものは、練乳です。
バターミルクは、バターの製造時に絞り出た水分を指します。
問46:チョコレートの加工適正に関する記述で、( )に入る語句として、正しいものを次から選びなさい。
テンパリングを行う際、溶解温度が最も高いのは( )である。
1 スイートチョコレート
2 ミルクチョコレート
4 パータ・グラッセ
正解:1
解説:それぞれの溶解温度は、スイートチョコレートは50~55℃、ミルクチョコレートは45~50℃、ホワイトチョコレートは40~45℃とされています。
またパータ・グラッセは、準チョコレートの洋生用チョコレートとして使用されるものなため、テンパリング作業を要しません。
問47:たんぱく質分解酵素を多く含む果実として、正しいものを次の中から選びなさい。
1 イチジク
2 オレンジ
3 イチゴ
4 モモ
正解:1
解説:たんぱく質分解酵素はいくつかありますが総称して「プロテアーゼ」と呼ばれています。このたんぱく質分解酵素を含む果物は、「パイナップル、メロン、パパイヤ、キウイフルーツ、イチジクなど」です。この果物に含まれている酵素は、約60~80℃の温度で壊れます。使用する際は、加熱してからゼラチンなどのたんぱく質と合わせるようにしましょう。
問48:日本農林規格(JAS規格)で規定されているジャム類として、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 ジャム
2 ゼリー
3 ピューレ
4 マーマレード
正解:3
解説:ジャム類に分類されているのは、「ジャム、マーマレード、プレザーブ、フルーツソース」です。
問49:でん粉が主成分となる種実として、正しいものを次の中から選びなさい。
1 アーモンド
2 カシューナッツ
3 ピーナッツ
4 チェスナッツ
正解:4
解説:種実類(堅果類)で主成分がでん粉のものは、「チェスナッツ(栗、マロン)」です。その他のナッツは、主に脂質になります。
問50:ゼラチンに関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 冷水によく溶ける。
2 原材料は、牛や豚の骨や皮などである。
3 たんぱく質分解酵素を含む生果実を加えると凝固力が高まる。
4 ゲル化に必要なゼラチン溶液の濃度は、一般的に10~15%である。
正解:2
解説:ゼラチンの原材料は、ほかにクジラ、ウサギからも抽出されています。使用上の注意として、ゼラチンの溶解温度は40~50℃と比較的低いため冷水で戻します。また主成分がたんぱく質なため「たんぱく質分解酵素」の影響で凝固力を失います。ゲル化に必要な濃度は、作りたいものにより変化しますが、最低3~4%を目安にします。
問51:食塩の作用に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 たんぱく質の熱凝固を妨げる。
2 グルテンの形成を阻害する。
3 果物を剥いた後に食塩水に漬けると、褐変を促進する。
4 野菜や果物のジュースに加えると、ビタミンCの酸化を遅らせる。
正解:4
解説:塩の効果として、小麦粉に含まれているたんぱく質(グルテン)を引き締めることができます。また果物に対しては、酸化を防ぐ効果として褐変を遅らせることが可能です。
問52:イーストフードの素材と使用目的に関する組み合わせとして、誤っているものを次の中から選びなさい。
(素材) (使用目的)
2 炭酸カルシウム ― 水の硬度調整
3 L-アスコルビン酸 ― 生地の物性改良
4 α―アミラーゼ ― 生地の還元剤
正解:4
解説:イーストフードは、主に製パン改良剤として使用されている食品添加物です。パンに使用される酵母菌(イースト菌)の栄養源となり発酵作業を助ける効果、原料水の質の改善効果、pH調整(水素イオン濃度)の効果があります。
問53:ベーキングパウダーに配合される速効性の酸性剤として、正しいものを次の中から選びなさい。
1 酒石酸
2 ミョウバン
3 グルコノデルタラクトン
4 でんぷん
正解:1
解説:ベーキングパウダーは、ガス発生基剤(炭酸水素ナトリウム(重曹))+酸性剤(酒石酸水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、酒石酸、焼ミョウバン、フマル酸、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなど)+緩和剤(でん粉、小麦粉)の3種類から調合されています。
問54:乳化剤の種類及び働きに関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
2 ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖8個を親油基にもつ乳化剤である。
3 ソルビタン脂肪酸エステルは、水中油滴型と油中水滴型の両方の乳化に適している。
4 レシチンは、動植物性に含まれる天然の乳化剤である。
正解:2
解説:ショ糖脂肪酸エステルは、親水基のショ糖と親油基の食用油脂で構成された乳化剤です。構造は、ショ糖8個+脂肪酸(オレイン酸など)をエステル結合させた乳化剤です。
以上が、令和3年度に東京都で実施された製菓衛生師試験の製菓理論の解説です。
製菓理論の出題数について、東京都は15問出題されました。
令和3年度の製菓理論は、「砂糖・甘味料」「米粉」「小麦粉」「鶏卵」「でん粉」「乳及び乳製品」「チョコレート」「凝固剤」「果実加工品」「種実類」「食塩」「膨張剤(イーストフード、ベーキングパウダー)」「乳化剤」が出題されました。
製菓理論では、菓子原材料の各分野より非常に濃い部分を出題した感じがあります。現在ではほとんど使用されていない「イーストフード」や「乳化剤の構造」といったところです。しかしながら、メインの砂糖や小麦粉、でん粉といった問題は比較的解きやすかった内容です。
やはり、問題文の読み間違いに注意することが超大事と感じた内容でした。
実際の試験問題は、東京都のHPで公開されています。過去問題を繰り返し解いていくことで、出題される問題の傾向が見えてきます。
わたしが解説している過去問題もぜひ参考にしてみてください!
東京都だけでなく他の都府県で実施される製菓衛生師試験を受験される方たちにも少しでも助けになればと思います。
【東京都福祉保健局が公表している過去問題です。】
・令和3年度製菓衛生師試験問題【東京都】(PDF:2,382KB)
・令和3年度製菓衛生師試験正答【東京都】(PDF:44KB)
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