ここでは、令和4年度に実施された関西広域連合の製菓衛生師試験について、科目別に私なりの見解で解説をしていきます。
ここでは、「食品衛生学」を解説していきます。
よろしければ、製菓衛生師試験勉強のお役に立てれば幸いです。
【関西広域連合の製菓衛生師試験状況はコチラから確認できます。】
【食品衛生学】
問25 ノロウイルスによる食中毒の予防に関する記述として、誤っているものを一つ選べ。
1 消毒には、次亜塩素酸ナトリウムよりもアルコールが効果的である。
2 調理従事者は、用便後、調理前等における手洗いを確実に行う。
3 下痢、嘔吐などの症状がある場合は、調理に従事しない。
4 食品の中心部が85~90℃で90秒間以上の加熱を行う。
正解:1
解説:ノロウイルスの予防法については、以下の通りです。
・加熱して食べる食品は、中心部まで十分に加熱する。(中心温度85~90℃で90秒間以上)
・用便後、調理前等における石鹸による手指の洗浄を確実に行う。
・下痢、嘔吐などの症状がある場合は、絶対、調理に従事しない。
・マスク・衛生手袋の着用を習慣づける。
・清潔な機械・器具・容器を使用し、次亜塩素酸ナトリウム(50~200ppm程度)溶液による消毒を行う。
問26 カンピロバクター食中毒に関する記述として、正しいものを一つ選べ。
1 原因は、鶏肉などの生食や加熱不足が多い。
2 潜伏期間は、2~5時間である。
3 新鮮な食材であれば食中毒の危険性はない。
4 主症状は嘔吐や発熱で、下痢や腹痛はない。
正解:1
解説:カンピロバクターについては、以下の通りです。
・動物の腸管(とくに鳥類)に存在し、比較的少量の菌で発症する。
・潜伏期間は、平均2~3日で発症する。
・症状は、下痢・腹痛・嘔吐・発熱など
・予防として、生肉と調理済みの食品は別々に保存する。食肉類は十分に火を通しておく。
使用する水は塩素消毒されたものを使用する。(湧き水は危険)
問27 食品添加物の用途名と物質名の組合せで、誤っているものを一つ選べ。
1 保存料 ― デヒドロ酢酸ナトリウム
2 甘味料 ― アスパルテーム
4 酸味料 ― 酢酸エチル
正解:4
解説:使用が認められている食品添加物は、厚生労働大臣が指定しているもので、指定添加物(463品目)、既存添加物(365品目)、天然香料、一般飲食物添加物があります。酸味料は、クエン酸、酢酸、乳酸などがあり、使用基準はありません。
問28 次の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。
( A )とは、全ての微生物を(芽胞も含めて)死滅または除去し、完全に無菌状態にすることである。
( B )とは、病原性のある特定の微生物を死滅させたり感染力を失わせたりして、感染を防ぐことである。
A B
1 消毒 ― 滅菌
2 滅菌 ― 消毒
3 殺菌 ― 滅菌
4 消毒 ― 殺菌
正解:2
解説:消毒に関する事項について、滅菌、殺菌、消毒の3つに区別されています。消毒とは、病原微生物を死滅させて感染症や食中毒の危険をなくすことです。滅菌と殺菌は、問題文の通りです。
問29 カビによる中毒に関する記述について、誤っているものを一つ選べ。
1 食品にカビが付着して産生する毒による中毒である。
2 カビが産生する毒(カビ毒)は、マイコトキシンと呼ばれる。
3 麹カビの一部が産生するアフラトキシンは、中毒の原因となる。
4 カビ毒には、発がん性は認められていない。
正解:4
解説:寄生菌類について、真菌類(カビ)の寄生により有毒化して食中毒を起こすことがあります。一般に有毒なカビ毒は「マイコトキシン」です。またマイコトキシンの一種で「アフラトキシン」という病院物質は肝臓に対して強烈な発がん性があることが知られています。
問30 HACCPに関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。
HACCPは、それぞれの工程で起きうる危害の要因を( A )して、その危害要因を( B )する方法を決め、それぞれに対応した基準を作り、いつ、どこで、だれが、何の目的で、どの基準に従って、どのような作業を行ったかを( C )し、証拠書類を残しておくというシステムである。
A B C
1 記録 ― 分析 ― 制御
2 制御 ― 記録 ― 分析
3 分析 ― 制御 ― 記録
4 記録 ― 分析 ― 制御
正解:3
解説:HACCPは、「危害分析重要管理点」(Hazard Analysis and Critical Control Point)のことです。1960年代に米国の宇宙開発計画(アポロ計画)の中で開発された食品衛生管理システムです。令和2年6月から全ての食品製造施設等において義務化されています。
問31 食中毒発生時における営業者の保健所に対する対応として、誤っているものを一つ選べ。
1 保健所に速やかに報告する。
2 食品衛生監視員の調査には、積極的に協力する。
3 原因と思われる食品・食材は、直ちに廃棄する。
4 保健所の調査において、施設の不備が見つかった場合は、その指示に従う。
正解:3
解説:食品衛生法では、医師が食中毒やその疑いがあると診断した場合、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることが定められています。
病院から連絡をうけた保健所は、ただちに患者への調査を開始すると同時に、食中毒の発生源と疑われる施設への立入調査を行います。飲食店には立入調査の結果と、体調不良の患者への聞き取り調査の内容をもとに、通常、数日~1ヶ月以内に行政指導や行政処分といった判断が下されます。
営業者が保健所への対応として求められることは、「申し出のあった客の利用した日時」「その日の利用者」「原因と思われる食品・調理工程」「体調不良な従業員の有無」 「その他の苦情」などです。(事案により異なります。)この時に提出を要求されるものとして「調理方法マニュアル」「衛生管理記録類」「従業員の検便結果」「検体」「仕入れ履歴」などです。
問32 食品と有害物質の組合せで、誤っているものを一つ選べ。
1 ふぐ ― テトロドトキシン
2 あさり ― シアン
3 じゃがいも ― ソラニン
4 さんまの干物 ― ヒスタミン
正解:2
解説:食品の中には、有害成分や有毒成分を持ち合わせているものがあります。
①食中毒のような急性毒性を示すもの
②突然変異性物質あるいは発がん性物質など慢性毒性を示すもの
③栄養素の消化吸収、生理作用阻害を示すもの
④アレルゲンとなりうるもの
シアン化合物については、アンズ、ウメ、スモモ、ビワなどの種子にある仁や未熟な果実の果肉や葉には、アミグダリンなど、体内で分解されると非常に強い毒性をもつ青酸を発生するおそれのあるシアン化合物が含まれています。これを多く摂取すると、頭痛やめまい等の健康被害を引き起こす恐れがあります。
問33 食品中の異物に関する記述について、誤っているものを一つ選べ。
1 異物の混入により人の健康を損なうおそれがある食品の販売は、食品衛生法で禁止されている。
2 植物性異物とは、植物種子、ダニ、毛髪などをいう。
3 鉱物性異物とは、土砂、ガラス、陶磁器片などをいう。
4 毛髪の混入防止対策として、作業中は帽子などの着用を確実に行う。
正解:2
解説:異物混入については、食品の製造過程で混入する異物には、「動物性異物混入」「植物性異物混入」「鉱物性異物混入」があります。「動物性異物混入」は、人の毛髪・爪・歯等身体の一部、ねずみや鳥類等動物の体の一部やその排泄物、昆虫類やその排泄物があります。「植物性異物混入」は、食さない植物(木片・もみがら・植物の有毒成分部分等)、紙類、かび類、ゴム片があります。「鉱物性異物混入」は、小石や砂、貝殻片、金属片、ガラス片等があります。
問34 熱に強い芽胞を作る細菌として、正しいものを一つ選べ。
1 サルモネラ属菌
2 ウエルシュ菌
3 腸管出血性大腸菌
4 黄色ブドウ球菌
正解:2
解説:食中毒菌の熱耐性については、以下の通りです。
・サルモネラ属菌は、70℃で1分間以上加熱するとよい。
・ウエルシュ菌は、熱に強い有芽胞菌です。
・腸管出血性大腸菌は、75℃1分以上の加熱で死滅します。
・黄色ブドウ球菌は、菌自体は加熱により死滅するが、毒素「エンテロトキシン」は耐熱なため、毒素だけが残り食中毒を発症する場合がある。
問35 アルコール消毒に関する記述について、正しいものを一つ選べ。
1 手指の消毒には適さない。
2 アルコールは残留性が高い。
3 100%のものより、70%溶液のほうが消毒力が強い。
4 対象物の表面に水分がある状態にして噴霧する。
正解:3
解説:アルコール消毒は、殺菌の目的に消毒剤を使用する化学的方法のひとつです。食品衛生上使用する消毒剤は、毒性が少ないこと、臭気などが残留せず、食品に変化を与えないものであることが必要です。
問36 食中毒の分類と原因の組合せで、誤っているものを一つ選べ。
1 自然毒 ― クドア・セプテンプンクタータ
2 細菌性 ― サルモネラ属菌
3 ウイルス性 ― ノロウイルス
正解:1
解説:自然毒とは、自然界の動植物に含まれている毒を指します。「動物性自然毒」では、フグ、イシナギ、バラムツ、アブラソコムツ、シガテラ魚、貝毒などがあります。「植物性自然毒」では、毒キノコ、じゃがいもの芽、青酸含有豆(シアン化合物)、トリカブト、ドクセリ、ヒガンバナ、ハシリドコロなどがあります。
以上が、令和4年度に関西広域連合で実施された製菓衛生師試験の食品衛生学の解説です。
食品衛生学は、食中毒菌に関して主に症状と対策について問われることが多いと思います。今回は、ノロウイルスとカンピロバクターといった食中毒の中では、ど定番の菌が出題されました。食中毒菌は、主に3類感染症に分類されています。その中の食中毒菌はすべて把握しておくとよいでしょう。
近年、義務化されたHACCPは、食業界の衛生管理では重要視されています。この衛生管理については、内容をしっかりと把握しておきましょう。
令和4年度の問題構成は、食品衛生学の範囲がすべて出題された感じの内容に思います。食材に関する有害物質や異物混入、消毒に関する事項についてなど、食に関する仕事で決して外すことのできない事項ばかりなので、しっかりと把握しておくと今後にも活かせると思います。
実際の試験問題は、関西広域連合のHPで公開されています。過去問題を繰り返し解いていくことで、出題される問題の傾向が見えてきます。
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関西広域連合だけでなく他の都府県で実施される製菓衛生師試験を受験される方たちにも少しでも助けになればと思います。
【以下のリンクは、試験対策に活用できるかと思います。】
令和4年度製菓衛生師試験問題【関西広域連合】(PDF:355.6KB)
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