ここでは、令和4度に東京都で実施された製菓衛生師試験について、科目別に私なりの見解で解説をしていきます。
今回は、製菓理論をみていきます。
よろしければ、まだ実施されていない令和4年度の製菓衛生師試験勉強や令和5年度の国家試験のお役に立てればと思います。
また令和4年度に実施された製菓衛生師試験について、以下より確認ができます。
●令和4年度東京都製菓衛生師試験の実施について 東京都福祉保健局
●令和4年度東京都製菓衛生師試験合格者受験番号一覧(PDF:105KB)
【製菓理論】
問40:甘味料に関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 ショ糖は、ブドウ糖と果糖からなる二糖類である。
2 でん粉を酸または酵素で分解すると、糖化することができる。
3 トレハロースは、ブドウ糖に水素分子を結合した糖アルコールである。
4 でん粉を糖化させると水飴になる。
正解:3
解説:トレハロースは、でん粉糖のひとつで非還元性糖質です。トレハロースは、酵素によってブドウ糖が2分子結合した低甘味料です。砂糖と同じ4kcalですが甘味は約40%で、特徴としてはでん粉の老化防止が期待でき、生地にしっとりとした食感を与えてくれます。一般には、砂糖と併用して使用しますが、割合としては砂糖の分量に対して20~40%を置き換えて使用するとよいとされています。
問41:でん粉に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 うるち米のでん粉は、アミロペクチンで100%構成されている。
2 アミロペクチンは、ブドウ糖が枝分かれせずに鎖のようにつながっている。
3 βでん粉は、水を加えて加熱すると糊化する。
4 糊化したでん粉は、温度が0~5℃の時に最も老化が抑制される。
正解:3
解説:3の選択肢について、βでん粉は老化したでん粉と覚えている方が多いと思いますが、糊化前のでん粉もβでん粉と考えると説明がつきます。うるち米のでん粉は、アミロース約17.0%アミロペクチン約83.0%です。アミロペクチンが約100%は、もち米になります。アミロースが直鎖状でアミロペクチンが分枝状につながっています。糊化したでん粉の老化は、水分が30~60%のときが最も早く、0℃までは低くなるほど早くなります。
問42:小麦粉のグルテンの性質とその主な用途の組み合わせとして、正しいものを次の中から選びなさい。
( 種類 ) ( グルテンの性質 ) ( 用途 )
1 薄力粉 ― 軟弱 ― カステラ、スポンジ
2 中力粉 ― 軟 ― 食パン、菓子パン
3 デュラム粉 ― 強 ― マカロニ、スパゲティー
4 強力粉 ― 強靱 ― クッキー、ビスケット
解説:中力粉は、グルテンの性質が「やや軟」で主な用途は日本めん、即席めんです。デュラム粉は、グルテンの性質が「軟」で主な用途はマカロニ、スパゲッティーです。強力粉は、グルテンの性質が「強靭」で主な用途は食パン、菓子パンとなります。
問43:卵の熱凝固特性に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 卵黄の完全凝固温度は、卵白よりも高い。
2 卵を68℃くらいでゆっくり加熱すると、かたゆで卵ができる。
3 卵液に砂糖を添加して加熱すると、凝固が促進され硬くなる。
4 食酢の入ったお湯に割卵した生卵を落として加熱すると、凝固が促進される。
正解:4
解説:4について、食酢だけでなく塩もたんぱく質を固める作用があるので同じことがいえます。卵の凝固温度は、卵黄が65~70℃、卵白が60℃から固まりはじめ70~80℃で完全に凝固します。ゆで卵は、沸騰した湯を使用します。
問44:卵の乳化特性に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 卵白に含まれるレシチンに、強い乳化力がある。
2 卵の乳化力は、温度やpHに影響されない。
3 卵の乳化特性を利用したマヨネーズは、油中水滴型のエマルションを形成している。
4 バターケーキの生地調製で、材料を分離させずに均一に分散させる働きがある。
正解:4
解説:卵黄にレシチンが含まれます。卵の乳化は、温度やpHに影響されます。マヨネーズは水中油滴型エマルジョンを形成しています。乳化とは、分離している2つの物質を攪拌し細粒化し混ざり合った状態にする作用をいいます。この乳化する作用をもつ物質を乳化剤といいます。
問45:牛乳に関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に基づき、一定の規格が定められている。
2 酸や酵素を加えると、凝固する性質がある。
3 乳たんぱくの約80%が、カゼインである。
4 乳固形分の約4%が、乳糖である。
正解:4
解説:乳糖は、牛乳特有の甘味の少ない糖質で、ブドウ糖とガラクトースからなり水に溶けにくい性質を持ち、乳固形分の約40%を占めています。
問46:ホイップクリーム(しっかり泡立った生クリーム)の状態に関する記述として、正しいものを次の中から選びなさい。
1 脂肪球が連続的につながって気泡を取り囲み、網目構造を形成した状態。
2 脂肪球膜が崩れ、凝集している状態。
3 分離が起こり流水だけでは器具に付いたクリームが洗い流せない状態。
4 乳漿(液体)に脂肪球が分散した状態。
正解:1
解説:クリームは、全乳から脂肪分を集めたもので、クリームセパレーターで分離してつくります。一般に脂肪分約25%、水分約65%のものになります。
問47:油脂に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 ココアバターは、可塑性範囲が広い。
2 バターは、水中油滴型の乳化構造である。
3 ショートニングは、固形状や液状、粉末状の商品がある。
4 融点が高い固体脂ほど、口どけがよい。
正解:3
解説:ココアバター(カカオバター)の可塑性範囲は、33~35℃と非常に狭いです。バターは、冷えると固まることから油中水滴型の乳化構造となります。融点が高いということは、温度が高くないと柔らかくならない・溶けないといったことになります。
問48:酵母(イースト)の働きに関する記述で、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 製パンにおける酵母の役割は、パンを膨らませることである。
2 酵母は、パン生地に含まれるたんぱく質を分解して発酵する。
3 発酵により、アルコールと炭酸ガスを発生する。
4 酵母の働きにより、パン生地はなめらかな伸展性のある状態になる。
正解:2
解説:酵母菌は、糖からアルコール、有機酸、エステルを生成し、炭酸ガスを発生させます。
問49:寒天に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 寒天ゲルが凝固する濃度は、0.1%である。
2 口当たりの軟らかい寒天ゲルをつくるためには、できるだけ濃度を上げる方がよい。
3 寒天を果汁100%の柑橘系ジュースで煮溶かしてから冷ますと、強固な寒天ゲルになる。
4 糖濃度が高い寒天ゲルほど、離水しにくい。
正解:4
解説:寒天の凝固する限界濃度は、通常0.4~0.45%です。口当たりを柔らかくする場合は、寒天濃度を下げる方がよいです。寒天は、酸性に弱く一緒に加熱すると分解され凝固しません。
問50:ゼラチンに関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 ゲルの融解温度は寒天より低い。
2 海藻から抽出された天然多糖類である。
3 ゲルは熱不可逆性の特徴がある。
4 消化吸収されない性質がある。
正解:1
解説:ゼラチンのゲル強度は、寒天に対して10分の1となります。ゼラチンは、動物より繊維状たんぱく質コラーゲンおよび骨の中にあるオセインを分解し、生成して作ります。ゼラチンは、温度により溶けたり固まったりするので熱可逆性となります。ゼラチンは、消化吸収されやすく、その他の食物の消化を助ける働きがあります。
問51:ゼリー菓子として、誤っているものを次の中から選びなさい。
1 ゼリービーンズ
2 フルーツゼリーキャンディー
3 キャンディピール
4 淡雪羹
正解:3
解説:ゼリービーンズ(ジェリービーンズ)は、寒天で固めています。フルーツゼリーキャンディーは、ゼラチンで固めた菓子です。淡雪羹は、寒天で固めた菓子です。キャンディピールは、ピール(果皮)を砂糖漬けした菓子です。
問52:蒸留酒に分類されるものとして、正しいものを次の中から選びなさい。
1 りんご酒
2 ラム酒
3 ワイン
4 清酒
正解:2
解説:酒類には、醸造酒・蒸留酒・混成酒の3種類があります。簡単に区別すると、醸造酒は1回の蒸留を行った酒、蒸留酒は2回以上蒸留したお酒と考えるとよいと思います。上流の回数が多いほど、アルコール度数も上がります。また混成酒は、2種類以上のお酒や香料・果実シロップなどを組み合わせたものになります。
問53:香料に関する記述として、正しいものを次の中から選びなさい。
1 香料は、天然香料と合成香料がある。
2 天然香料とは、かんきつ類などの植物性香料のみを意味する。
3 食品に使用する香料は、食品安全基本法によって規制されている。
4 香料は食品の安全性が確保できれば、着香の目的以外にも使用が認められている。
正解:1
解説:天然香料は、主に植物性で、花・茎葉・根・樹皮・果実・種子などから香気成分を抽出した精油となります。香料は、食品添加物となるため食品衛生法で規制されています。香料に関する使用は、食品衛生法で厳しく規制されています。
問54:着色料に関する記述で、正しいものを次の中から選びなさい。
1 食品衛生法で指定された天然着色料には使用基準がない。
2 天然着色料より合成着色料の方が、種類が多い。
3 カステラやスポンジケーキに使用できない着色料がある。
4 2種類以上の着色料を混ぜて使用することはできない。
正解:3
解説:食品衛生法で指定されている着色料はすべて使用基準を厳守しなければなりません。天然着色料と呼ばれるものは「既存添加物(47品目)」「一般飲食添加物(44品目)」として定義されています。それ以外のものは「指定添加物(33品目)」として定義されています。たくさんある着色料ですが、和菓子・洋菓子・製パンに使用される着色料は使用基準を厳格に指定されています。着色料の使用基準は厳守ですが、混合させることは可能です。
以上が、令和4度に東京都で実施された製菓衛生師試験の製菓理論に関する解説となります。実際の試験問題は、東京都のHPで公開されています。(以下にリンク有)
製菓理論は、製菓で使用される食材を中心に出題されています。香料や着色料などは食品添加物にあたるので、食品衛生学と結びつけて考えるとよいでしょう。甘味料やでん粉といった分野は栄養学と合わせて考え、鶏卵や牛乳などは食品学と結びつけて考えると横断的に内容を把握することができると思います。その他の製菓材料は、各分野の実技を中心に結びつけると全体的に把握できて試験対策ができると思います。
製菓衛生師試験の対策は、過去問題を繰り返し解いていき、出題頻度の高い部分を把握しておくと、ある程度対処できると思います。令和5年度の東京都で実施される製菓衛生師試験を受験される方たちに少しでも助けになればと思います。
以下のリンクは、試験対策に活用できるかと思います。
【東京都HPより】
●令和4年度 東京都製菓衛生師試験・問題(PDF:4,892KB)
●令和4年度 東京都製菓衛生師試験・正答(PDF:50KB)
●令和4年度 東京都製菓衛生師試験・訂正(PDF:123KB)
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