ここでは、令和3度に三重県で実施された製菓衛生師試験について、科目別に私なりの見解で解説をしていきます。
今回は、食品衛生学をみていきます。
よろしければ、令和4年度の製菓衛生師試験勉強のお役に立てればと思います。
また令和4年度に実施される製菓衛生師試験について、新型コロナウイルス感染症対策に関しては以下より確認ができます。
【食品衛生学】
問19:次の令和2年(2020年)食中毒統計(厚生労働省)に関する記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。
1 事件数が最も多い病因物質は、アニサキスである。
2 患者数が最も多い病因物質は、ぶどう球菌である。
3 自然毒食中毒において、死者が発生している。
4 事件数が最も多い原因施設は、飲食店である。
正解:2
解説:2020年の統計より、細菌性食中毒の件数は273件(過去最少)、ウイルス性食中毒の件数は101件(過去最少)、寄生虫による食中毒の件数は487件(過去最多)となっています。寄生虫は、アニサキスの件数が圧倒的に占めていた年となります。
問20:次の食中毒病因物質の分類に関する組み合わせのうち、誤っているものを1つ選びなさい。
1 細菌(毒素型) - ボツリヌス菌
2 植物性自然毒 - ソラニン
3 動物性自然毒 - ムスカリン
4 化学物質 - ヒスタミン
正解:3
解説:「ムスカリン」は、キノコ毒です。動物性自然毒のほとんどの原因食品は魚介類となります。フグ毒のテトロドトキシンが超有名です。貝毒では、内因性貝毒、外因性貝毒、麻痺性貝毒、下痢性貝毒と大きく4つに分類されます。
問21:次の食中毒菌と主な原因食品の組み合わせのうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 腸炎ビブリオ - 馬肉
2 サルモネラ属菌 - 卵及びその加工品
3 セレウス菌 - 瓶詰・缶詰食品
4 腸管出血性大腸菌 - ヒラメの刺身
正解:2
解説:腸炎ビブリオは、海水中に存在し、魚介類に付着することで感染します。セレウス菌は、芽胞をつくる菌で、土壌・塵埃・水・植物の表面など自然界に広く分布しています。腸管出血性大腸菌は、主に牛などの家畜が保菌しているケースが多いですが、大腸菌は、ヒト、家畜、ペットなどの動物の腸管内や自然界に広く分布している菌となります。
問22:次のカンピロバクター食中毒に関する記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 毒素型の細菌性食中毒に分類される。
2 摂取菌量が100万個以下であれば、発症することはない。
3 潜伏期間は、通常1~3時間程度である。
4 主な原因食品として、未加熱又は加熱不十分な鶏肉料理が挙げられる。
正解:4
解説:カンピロバクターは、動物の腸管(特に鳥類)に存在します。近年ではノロウイルスと同等の食中毒発生件数を占めています。症状としては、潜伏期間は2~3日で、下痢・腹痛・嘔吐・発熱などの症状がでます。近年の原因食品は、生肉料理からの感染となっており、十分に加熱をして食すことが推奨されています。
問23:次のウエルシュ菌食中毒に関する記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。
1 原因菌は、人や動物の腸管内、土壌、下水など自然界に広く分布している。
2 原因菌は、芽胞を形成する嫌気性菌である。
3 主な原因食品として、カレーやシチューが挙げられる。
4 重症化すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こし、死亡することがある。
正解:4
解説:4の症状は、大腸菌(腸管出血性大腸菌)による症状となります。ウエルシュ菌の症状としては、6~18時間くらいの潜伏期間があり、ほとんどは12時間以内に吐き気・腹痛・下痢などを発症します。予防法として、調理後は速やかに食すこと。もし残すようであれば、直前に十分に加熱を行うことが大事です。
問24:次のノロウイルスに関する記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 食品を介さずに、人から人に感染することはない。
2 症状のない不顕性感染者は、便中にウイルスを排泄することはない。
3 加熱調理によりウイルスを失活させるには、中心部が85~90℃で、90秒間以上の加熱が必要とされている。
4 潜伏期間は、通常6時間程度である。
正解:3
解説:ノロウイルスは、食品を媒介する食中毒と人から人へうつる感染症の二つがあります。冬場に症例が多くありますが、1年を通して食中毒症例が出ています。ノロウイルスは、球形のウイルスで、人の小腸粘膜でのみ増殖する特徴があります。主な症状は、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・発熱で、通常24時間~48時間のうちに発症します。非常に感染力の高いノロウイルスの主な予防法として、中心温度85~90℃で90秒以上の加熱、石鹸による手指の洗浄、疑わしい症状がある場合は調理に従事しないこと、マスク・衛生手袋の着用を習慣づけること、次亜塩素酸ナトリウム(50~200ppm程度)溶液による消毒を行うことです。
問25:次の自然毒に関する記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。
1 フグ毒(テトロドトキシン)は、通常の加熱調理では無毒化されない。
2 シガテラ中毒の原因となる代表的な魚種として、バラフエダイやオニカマスが挙げられる。
3 有毒植物による食中毒では、スイセンをニラやノビルと誤って喫食する事例が多い。
4 ジャガイモの芽の主な有毒成分は、サキシトキシンである。
正解:4
解説:ジャガイモの毒は、芽や皮に多く含まれ、ソラニン類となります。
問26:次の食品添加物の用途と物質名の組み合わせのうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 漂白剤 - ソルビン酸
2 保存料 - 亜硝酸ナトリウム
3 甘味料 - アセスルファムカリウム
4 酸味料 - イマザリル
正解:3
解説:ソルビン酸は、脂肪酸の一種で主に保存料として使われています。亜硝酸ナトリウムは、主に発色剤として使用されます。イマザリルは、防カビ剤として使用されています。
問27:次のうち、アレルゲンの表示が義務付けられている特定原材料の組み合わせとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 もも、ぶどう
2 落花生、ピスタチオ
3 小麦、大麦
4 卵、乳
正解:4
解説:アレルゲンの特定原材料は、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の7品目が表示義務として定められています。また推奨表示として、特定原材料に準ずる品目は、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの21品目が定められています。
問28:HACCPの7原則において、空欄にあてはまる語句の組み合わせとして、正しいものを1つ選びなさい。
原則1 危害要因の分析
原則2 重要管理点の設定
原則3 (ア)
原則4 モニタリング方法の設定
原則5 (イ)
原則6 検証方法の設定
原則7 記録と保存手順の設定
(ア) (イ)
1 製品説明書の作成 - 製品検査の実施
2 管理基準の設定 - 改善措置の設定
3 製造工程図の作成 - 管理基準の設定
4 現場での確認 - 製品検査の実施
正解:2
解説:HACCPは、「危害分析重要管理点(Hazard Analysis and Critical Control Point)」の略称です。米国の宇宙開発計画(アポロ計画)の中で、宇宙食の安全確保のため開発された食品衛生管理システムです。工程ごとに、危害分析を行ってどのような危害が、どの工程で生じる可能性があるのか、また、その危害を制御するにはどの工程でどのように管理すればよいかの科学的根拠に基づいて決め、それぞれに対応した科学的根拠に基づいた基準をつくるシステムで、「いつ、どこで、誰が、何の目的で、どのような基準で、どのような作業を行ったか」を記録し、証拠書類として残します。現在では、すべての食品製造施設等において、HACCPによる衛生管理が義務化されています。
問29:次のHACCPによる食品の衛生管理に関する記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 食品衛生法において、小規模な営業者等は、取り扱う食品の特性に応じて弾力的なHACCPの取組を行うことが認められている。
2 HACCPシステムは、一度構築したら変更することができない。
3 重要管理点さえ適切に管理されていれば、施設の清掃や従事者の衛生管理等の一般衛生管理を行う必要はない。
4 保管が必要な記録は、HACCPシステムの検証に関する記録のみである。
正解:1
解説:HACCP方式は、製品の最終検査のみに基づく品質管理に代わるもので、プロセスチェック方式ともいい、「科学に基づいた系統的システムであり、食品の安全性を確保するために特定の危害およびそれらの管理のための方法を明らかにする。即ち、HACCPは、最終製品の試験に依存するのではなく、防止に焦点をあてて危害を評価し、管理システムを構築するための手段である」と定義づけています。
問30:次の記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。
1 次亜塩素酸ナトリウムは、飲料水、野菜、調理器具などの消毒に用いられる。
2 逆性石けんは、洗浄力は弱いが、殺菌力は強い。
3 アルコール消毒には、一般的に濃度100%のエチルアルコール水溶液が用いられる。
4 紫外線殺菌灯は、光線が直接当たらない器具の影になった部分や食品の内部には殺菌効果がない。
正解:3
解説:手指消毒に使用するアルコール消毒液は、アルコール度数が70%以上でないと効果が薄いとされています。厚生労働省は、濃度70%以上95%以下のエタノールが基準であると表記しています。
以上が、令和3度に三重県で実施された製菓衛生師試験の食品衛生学に関する解説となります。実際の試験問題は、三重県のHPで公開されています。(リンクは下です。)
食品衛生学は、製菓理論に次ぐ出題数の多い科目です。というのも食品衛生学は食品による健康被害を予測・予防するための手段について研究する総合的な科目であるからです。そういった背景もあるため主に食中毒に関する事項、食中毒を防ぐための手段に関する事項が中心に問われることが多いと感じます。対策としては、前年度までの食中毒統計を把握し、食中毒件数の多い原因物質から順にみていくとよいと思います。その他では、アレルゲンに関する事項、食品添加物に関する事項、HACCPに関する事項もしっかりと抑えておくとよいでしょう。
この試験の対策は、過去問題を繰り返し解いていき、出題頻度の高い部分を把握しておくと、ある程度対処できると思います。令和4年度の三重県で実施される製菓衛生師試験を受験される方たちに少しでも助けになればと思います。
以下のリンクは、試験対策に活用できるかと思います。
【三重県HPより】
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